忍峠12,003
場面は、リニア・レールの車内。シグレは少年漫画雑誌「週刊ベアナックル」を読んで笑っていた。
スズメ、ツバメ、ルイは、タブレット端末Fトームで、「忍峠12」のランキングを確認していた。

ルイ「で、スズメ先輩とツバメ先輩が、収録した、ミュージックビデオの順位は、フラクター選帝国ヤマト領の「ランカーズ・チャート」で251番目です」

スズメ「全然売れてないッス」

ツバメ「ちっ、スズメが居るから売れないんだ。アタシだけソロデビューすれば良かったのに。スズメなんか音痴だからバックダンサーで十分よ」
スズメ「ツバメ、酷いッス」
ルイ「酷いと言うより最悪と言うんでしょ?この女、最悪」
ツバメ「ルイ。後輩が、イキってんじゃないよ」
ルイ「ふん、知らない。じゃあ、フラクター選帝国のリニア・レールの駅弁。フラクター選帝国名物の合成食、培養肉の
ポークランチョンミート・サンドを食べますか」
ツバメ「ルイ、お前は太っている。だから食うな。駅弁を抜け。一食ぐらい食わなくても死にはしない、そのポークランチョンミート・サンドは、脂質35gが3個入りだ、食ったら確実に更に太る」
ルイ「失礼な。どこが、どう太っているんですか。この可愛くて楚々とした私の、どこの、どこら辺が太っているんですか?」
ツバメ「お前は、引きこもっている間に、怠けて忍術の修行を怠り、太っているはずだ。このツバメのウエストサイズ・スキャナーでは、お前は、プロフィール写真の時よりも8㎝ウエストサイズが増えている」
ルイ「(ぎくっ)。…一度忍者になったら、身に着けた実力と忍術は一生高い状態なんですよ。すぐにウエストも戻りますよ」
ツバメ「ははぁん、やはり、心当たりがあるな」
スズメ「ツバメは、無理してダイエットしているから他人に八つ当たりするッス。ルイは気にしてはイいけないッス。ルイ、狼煙家に伝わる忍術「矩」は、なんでも計測できるッス」
ルイ「私だって、体重が増えていることは薄々感づいているんですよ」
スズメ「ルイ、一緒に忍者の自重トレーニングに付き合うから、脂肪を有酸素運動で落とすッス」
ルイ「あれ、ハード過ぎるからイヤなんですけれど」
スズメ「低い強度のメニューから開始するッス」
ツバメ「現実を直視しろ、お前はプロフィールの体重51キログラムから59キログラムに増えている。この「矩」で測れば、お前の、実は自分は太っていないかもしれない、という淡い期待は打ち砕かれる」
ルイ「この性格最低の女には太っているって言われたくない」
ツバメ「随分と反抗的な後輩だな」
スズメ「ツバメ、先輩面しちゃダメッス」

蝉川時雨「おーい、お前たち。「ランカーズ・チャート」を、今、ケータイで、操作した。ヤマト領の中で、ランキングが、二十位まで上がっているはずだ」
スズメ「裏工作ッス」
ツバメ「スズメ、見なよ。確かに「Fトーム」でランンキングが変わっている。私たちのミュージックビデオが、急に激売れよ」
ルイ「確かに、Wb3ファイルの「ワタシらしくって???」が激売れです」
蝉川時雨「そして、YHKの「お元気ですかヤマト領」で、お前たちが、ルイを連れてくる前に収録した、ミュージックビデオが流れる段取りができている」
リニア・レールは、終点のミュリンゲルン王国に到着。
ツバメ「外国か(デデーン)。ここは敵地だな」
スズメ「ただの通行人しかいないッス。警戒したら逆に怪しまれるッス」
シグレ「フラクター選帝国から、ミュリンゲルン王国のテレビ局、MKBC(ミュリンゲルン・キングダム・ブロードキャスティング・コーポレーション)に裏工作が行われている。あの噴水の前に行け、テレビ局のクルー達がいるだろう」
スズメ「行くッス」
MKBCの女性アナウンサー「はい、みなさんが、フラクター選帝国ヤマト領から来ました、忍者だけの期待の超新星ユニット「忍峠12」ですね。あなたが、リーダーのスズメさんですね」
スズメ「そうッス」
MKBCの女性アナウンサー「では、あなたたちは、本当に、あの忍者なんですか?」
ツバメ「えっとぉ、私たちは忍者です。てへっ」
MKBCの女性アナウンサー「本当ですか?」
ルイ「(カメラ目線)では、私たちが、本当の忍者か当ててください。ね、皆さん?」
MKBCの女性アナウンサー「では、「忍峠12」のデビューソング「ワタシらしくって???」です」
スズメ、ツバメ、ルイの、ダンス・パフォーマンスが開始される。
MKBCの女性アナウンサー「それでは、「夕暮れに会いましょう」のリポーター、シュティファーでした。ミュリンゲルン中央駅の噴水広場から、お伝えしました」
ルイ「視聴率は、どのぐらいですか」
MKBCのテレビクルー「ああ、この時間帯の平均的な視聴率ですよ、平均視聴率にプラス0.25パーセントです」
ツバメ「う、売れない。なぜ? なぜ? なぜ? MKBCの視聴率に何の変化もない。なぜ、ここは、爆発的にヒットしないの?」
MKBCの女性アナウンサー「よく考えてくださいよ。ヤマト人の女性だけの歌と踊りのユニットが、コモンでウケると思いますか?」
ツバメ「なにぃ、てめぇ、アタシの魅力が世界で通用しないと言うのかい!貫手で腹に穴開けて背骨をガタガタ言わせるよ!」
スズメ「ツバメ、落ち着くッス。一般人に手をあげては絶対ダメッス!」
ツバメ「だって、私は…私は、有名になって、本当の…」
スズメ「ダメッス、それは秘密ッス!ルイに聞かれてはマズイッス!」
ルイ「(ジト目)なんか、隠し事をして居ません?私だけ仲間外れじゃないですか?嫌だなぁ。なんか、見えない壁を感じていますよ。なんか酷くありません?」
ツバメ「うっ、ちゅべたい」
シグレ「コーラを飲んで、頭を冷やせツバメ。ほら、おごりだ」
ルイ「あ、ツバメ涙目。鬼の目にも涙」
シグレ「余計な事を言うなルイ。お前たちのコーラもある」
ツバメ「判りましたよ。少しは頭を冷やしますよシグレ様。あーシュワーっと美味しい」
シグレ「スズメは、軽度の言語障害があるから、音痴の事を言うな。ほらツバメ、スズメに謝れ」
ツバメ「確かに、そうだよね、言い過ぎだった。ゴメン、スズメ」
スズメ「いいッス。ツバメとの付き合いは長いッス。ツバメだから許すッス」
シグレ「我々ヤマト人の忍者は、コモンのことを知らな過ぎたようだ。将軍家の、忍者マスター煉獄京様の力で、フラクター選帝国ヤマト領では、根回しと裏工作で、「ランカーズ・チャート」を上げるのは簡単だ。だが、コモンのミュリンゲルン王国ではガチで通用せん。問題だ。危うくコンサートを開く所だったが。今のままでは、チケットは全然売れないだろう」
ルイ「なんで、私に視線が集まるんですか」
スズメ「ルイは、コモンで冒険者をしていたッス」
ツバメ「お前は、どんな恰好をしていたルイ?」
ルイ「冒険者時代は、巫女服を着ていたんですよ。町ではセーターとかロングスカートとか、そんな感じですよ」
シグレ「作戦を練り直さなければならない。「忍峠12」が、コモンでスターダムを達成するために」
スズメ「判ったッス」
ツバメ「ええ、必ず、スターダム達成です」
ルイ「ピココと、レニー、サイに再び会うために」
「次回、フラクター選帝国本国からカメラマン到着。ジーン・ツヴァイとカメラ太郎登場」



